新調査報告「口先だけの甘い言葉:チョコレート業界は、カカオのサプライチェーンにおける森林破壊を終わらせるための約束を果たしていない」
〜業界の誓約から4年経った今も、カカオ栽培によって、保護区の破壊、チンパンジーやゾウの生息地消失などを含む森林減少の悪化が明らかに〜
2022年2月14日 – マイティー・アースが新たに実施したデータ分析調査により、「カカオと森林イニシアティブ(CFI)」(注1)開始から4年以上が経過した今も、アフリカの主要なカカオ生産国では、カカオ栽培のために広範囲にわたる森林破壊が続いていることが明らかになった。新調査報告「口先だけの甘い言葉:チョコレート業界は、カカオのサプライチェーンにおける森林破壊を終わらせるための約束を果たしていない」によると、業界が2019年に行動計画を発表した後の3年間で、カカオ生産地域における森林消失面積はコートジボワールで19,421ヘクタール、ガーナで39,497ヘクタールに及んでいる。この合計面積は、東京23区の面積に匹敵する。
命ある地球の保護活動を行うグローバルなアドボカシー組織マイティー・アースのCEO、グレン・ホロウィッツ(Glenn Hurowitz)はこう述べる。「このレポートは、カカオ産業の望ましくない面を明らかにし、チョコレート製品と森林破壊の関係を直ちに断ち切る必要があることを示しています。ネスレ、ハーシーズ、モンデリーズ、マース、不二製油、明治などのチョコレート企業は、口先だけの約束をやめ、CFI参加各国政府との協力のもと、森林破壊に対するオープンかつ効果的な共同モニタリングメカニズムを今年中に確立しなければなりません。このような破壊はすべて完全に防げるものであり、ずっと前に手を打つべきでした。手をこまねいているうちに、森林は消え続け、野生生物は死んでゆき、地域のコミュニティは苦境に陥っているのです」
レポートが示した重要ポイント
マイティー・アース西アフリカ代表のアムールライ・トゥーレ(Amourlaye Toure)はこう述べる。「カカオ栽培のための森林破壊はいまだに続いており、保護区内でさえ憂慮すべき規模で進行しています。『カカオと森林イニシアティブ(CFI)』が森林破壊を特定できず、目標を達成できないことにより、地域コミュニティの安定は失われ、絶滅危惧種野生生物は危険にさらされ、チョコレート産業の二酸化炭素排出量は増加しています。カカオ業界はマイティー・アースと同じ森林破壊追跡・防止ツールを持っており、財源に至ってはマイティー・アースを超えるものを持っています。しかし、業界の意志が限定的なものにとどまり、透明性・説明責任が欠如していることが、今も最大の障害となって進展を阻んでいるのです」
レポートで示された提言
熱帯林行動ネットワーク運営委員の中司喬之氏は、「大手チョコレート企業は、トレーサビリティの確認を行った上で、全てのサプライヤーについて企業グループレベルで、NDPE(森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止)方針の採用と実施を求め、森林減少への対処を進めていくことが必要です。ガーナからのカカオ関連産品の輸出先として日本は第二位、日本側から見た輸入先として7割以上を占めており、ガーナでの森林破壊に対しては重要な責任を負っていると言えます。今すぐにでも取り組むべき課題です」と述べている。
マイティー・アースは、衛星データ解析と現地調査を組み合わせ、カカオ栽培のために熱帯林伐採が進行している証拠を示した。失われた熱帯林には、チンパンジーやコビトカバなどの絶滅危惧種野生動物の生息に不可欠な指定保護区内の森林も含まれる。これらの森林はまた重要な炭素吸収源であり、気候変動と生物多様性の喪失の進行を遅らせるのに不可欠である。
(注1)2017年、イギリスのチャールズ皇太子の呼びかけで、世界の主要なチョコレート企業35社(日本からは株式会社明治と不二製油株式会社が参加)と世界カカオ基金、コートジボワール、ガーナ両政府などが参加し、カカオ生産による森林破壊を抑止するために「カカオと森林イニシアチブ(The Cocoa and Forests Initiative, CFI)」の設立を発表した。CFIは、2018年に国家実施計画(コートジボワール、ガーナ)、さらに2019年には企業向け行動計画(コートジボワール、ガーナ)を発表した。行動計画には「カカオセクターでの森林減少や森林劣化を新たに引き起こす活動を禁止し防止することを約束する」との文言も含まれている。
マイティー・アースは、2017年にチョコレート産業と森林減少の関係を示したレポート「CHOCOLATE’S DARK SECRET」を作成し、世界的に大きな注目を受けた。こうした批判を受けて、CFIは設立された。
マイティー・アースについて
マイティー・アース (www.mightyearth.org)は、命ある地球の保護活動を行うグローバルなアドボカシー組織です。自然のために地球の半分を守り、命が繁栄できる気候を確保することを目標としています。 当組織のチームは、世界に張り巡らされたパーム油、ゴム、カカオ、飼料などのサプライチェーンにおいて森林破壊と気候変動をもたらす汚染を大幅に削減するよう大手企業を説得し、熱帯地方の先住民族や地域住民の生活向上を図ることにより、変革を実現してきました。