国際NGOが「チョコレート成績表2022」を発表〜日本企業から6社が参加、カカオのトレーサビリティ確保に課題〜

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プレスリリース
2022年4月8日午前9時までエンバルゴ

国際NGOが「チョコレート成績表2022」を発表〜日本企業から6社が参加、カカオのトレーサビリティ確保に課題〜

欧米に比べ日本企業による環境・人権リスクへの対応は不十分

2022年4月8日 ー「世界チョコレート成績表」は、人権NGOビー・スレイバリー・フリー、マイティ・アース、熱帯林行動ネットワークなど29団体が参加するネットワーク団体「ザ・チョコレート・コレクティブ」によって、チョコレートの取引業者、加工業者、製造業者を含む世界最大のチョコレート企業38社(注1の社会的・環境的影響を評価したものです。

チョコレート業界が直面する6つの最も緊急な持続可能性の課題(トレーサビリティと透明性、生計維持所得、児童労働、森林破壊と気候、アグロフォレストリー、農薬管理)について評価しました(注2

日本の企業では、不二製油グループ(ブロマー)、伊藤忠商事、明治、森永製菓、大東カカオ、江崎グリコの6社が調査に協力しています(注3。日本企業の中では不二製油グループ(ブロマー)が一番高い評価を得ていますが、海外の企業に比べて遅れを取っています。

その他の日本企業についても、特に「中間業者を介するサプライチェーン(間接調達)」のトレーサビリティを確認していないケースが多く、その結果として他のカテゴリーの評価や総合評価も低くなっています。

「トレーサビリティと透明性」の項目において紫のハート(さらなる取り組みが必要)を獲得した伊藤忠商事でさえ、「2030年までにサステナブル・カカオ豆100%の調達」を目標にしています。「チョコレート成績表」の評価にも見られるように、日本企業には、早急にカカオ調達のトレーサビリティを見直し、カカオ生産が抱える問題を広く理解し、迅速な対応が求められています。

JATANの榎本氏は「日本の企業は、パーム油調達のトレーサビリティの確認は進んでいますが、カカオ調達ではまだまだ欧米に遅れています。トレーサビリティの管理はカカオ生産の裏に潜む様々な問題を把握する第一歩でもあり、大変重要ですが、日本企業には十分に理解されていないようです。」と述べています。

1マース、リンツ、ネスレ、モンデリーズ(キャドバリー)、フェレロ、明治、ハーシーなどの大手企業が含まれ、世界のチョコレート製品の80~90%を生産しています。

2「チョコレート成績表」は、世界のカカオの約75%が生産されている西アフリカを起点とした生産とサプライチェーンに着目しています。日本のカカオ豆の輸入額(2019年)の 約7割はガーナからのものです。

3日本はアジア最大のチョコレート市場で、2020年の小売売上高は5470億円(全日本菓子協会)を記録しています。しかし、日本企業は調査対象となった企業全体から見て最下位付近という評価になりました。

森林減少

これまでのマイティ・アースのデータ分析により、注目された「カカオと森林イニシアチブ(The Cocoa and Forests Initiative, CFI)」の発足から4年以上が経過した現在も、アフリカのカカオ生産上位国では、西アフリカでカカオ生産のために広大な面積の貴重な森林が破壊されていることが判明しています。この貴重な森林の消失は、この地域の小規模農家がカカオから生計を立てられず、拡大を余儀なくされていることが原因であることが多いのです。

マイティ・アースのシニア・アドバイザーとオレゴン州立大学地球海洋大気科学部のサミュエル・マウター氏は、「小規模な実証プロジェクトの時代は終わり、現在、多くの企業が農家の貧困に対処し、カカオ農家の生計を改善するための大きな取り組みを始めています」と述べています。「少なくとも、チョコレートブランドがこの問題を認識していることを示すものであり、これは進歩です。しかし、農家の家庭の貧困が児童労働、化学物質の使用、森林の転換を促すため、企業全体の協力体制を改善する必要があります。」と述べています。

今年、調査団体が一歩前進として確認できた点は、カカオと他の樹木を一緒に育てるアグロフォレストリーシステムによるカカオ生産への取り組みが大幅に増加したことです。このシステムには、カカオの生産量を維持しながら農家の多様化を支援し、同時に地域の生物多様性を回復・向上させるなど、多くの利点があります。

例えばネスレは今年、2022年末までに森林破壊地域に280万本の木を植えることを約束しました。


児童労働

昨年の調査以降、多くの分野で改善が見られる一方で、児童労働に巻き込まれている約156万人の子どもたちの問題については、この問題への取り組みを繰り返し呼びかけ、2020年の大規模な学術調査によって問題の規模が明らかになったにもかかわらず、まだ道半ばであると調査団体は述べています。

「西アフリカで見られる児童労働の多くは、危険な形態の児童労働です。重い荷物を運んだり、危険な装置を使ったり、化学物質にさらされたりと、子どもは危険にさらされています」と、「チョコレート成績表」をまとめたオーストラリアの人権NGOビー・スレイバリー・フリーのファズ・キット氏は述べています。 

「チョコレート業界の大企業は毎年、児童労働や、皮膚に火傷を負わせ呼吸に影響を及ぼす化学薬品にさらされる膨大な数の子どもたちについて、何か対策を講じると私たちに約束しています。私たちは、進歩が遅すぎる、チョコレートを作るために子どもたちを毒物に曝すのはやめなければならないと言っています。」

「企業が農家にきちんとお金を払って、生計維持所得を得られるようにすれば、カカオの生産に従事させられる子どもは減り、危険な農薬で手間を省こうとする農家も減るはずです。」

優良賞とワースト賞

今年、フェレロは、ハーシー、ユニリーバ、リッターなど、レインフォレスト・アライアンスやフェアトレードの認証を受けたカカオを100%に近い形で提供している企業の仲間入りを果たしました。

「認証は完璧なものではありませんが、多くの場合、企業の持続可能性の取り組みにおける前向きな第一歩となります」とファズ・キットは述べています。

ストーク、スターバックス、ゼネラル・ミルズは、「チョコレート成績表」への協力を拒否し続けたため、調査団体の「不参加賞」を授与されました。さらにストークは、同社のカカオサプライチェーンにおける方針と慣行についての透明性の欠如と、同社に対する市民社会の苦情を考慮して、全体的に最低の評価を受け、今年の「ワースト賞」を授与されました。

「もし、これらの企業がチョコレートのサプライチェーンの持続可能性を向上させるために前進しているのであれば、私たちやその顧客および投資家はそれについてもっと聞きたいと思うことでしょう」とキットは述べています。

「ザ・チョコレート・コレクティブ」について

ザ・チョコレート・コレクティブは、ビー・スレイバリー・フリーが率いる団体であり、チョコレート産業の変革に取り組む大学、コンサルタント、NGOを含む以下の29団体が参加しています。

調査チーム:Be Slavery Free, Macquarie University (Australia), Wollongong University (Australia), The Open University (UK)

アドバイザー:Forest Trends, International Cocoa Initiative, Pesticide Action Network, Sudwind Institute, VOICE Network

協力団体:Abolishion, ACRATH, Asset Campaign, Baptist World Aid Australia, Child Labor Coalition, EcoCare Ghana, Estwatch, European Freedom Network, Freedom United, Green America, 熱帯林行動ネットワーク, El Llamado del Bosque, マイティ・アース, National Consumer League, National Wildlife Federation, Netzwerk gegen Menschenhandel, RAIN, Roscidet, SIM for Freedom, Unseen.

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)について

熱帯林をはじめとした世界の森林の保全のために、森林破壊を招いている日本の木材貿易と木材の浪費社会を改善するための政府、企業、市民の役割を提言し、世界各地の森林について、生物多様性や地域の住民の生活が守られるなど、環境面、社会面において健全な状態にすることを目指しています。団体ウェブサイトには、マイティ・アースが2017年に発表した「Chocolate ‘s Dark Secret」の内容を日本語でまとめた「チョコレートについての基本情報」を用意していますので、ご参考までにお使いください。

マイティ・アースについて

マイティ・アース (https://mightyearth.org/chocolate/)は、命ある地球の保護活動を行うグローバルなアドボカシー組織です。自然のために地球の半分を守り、命が繁栄できる気候を確保することを目標としています。  当組織のチームは、世界に張り巡らされたパーム油、ゴム、カカオ、飼料などのサプライチェーンにおいて森林破壊と気候変動をもたらす汚染を大幅に削減するよう大手企業を説得し、熱帯地方の先住民族や地域住民の生活向上を図ることにより、変革を実現してきました。

ご連絡先:サミュエル・マウター、ロジャー・スミス [email protected] (日本語対応可)

ビー・スレイバリー・フリーについて

ビー・スレイバリー・フリーは、市民団体、コミュニティー、およびその他の組織からなる連盟で、ともにオーストラリア、オランダ、そして世界各地で現代版の奴隷労働の防止、廃止、撤廃に向け活動を行っています。ビー・スレイバリー・フリーには、現代版の奴隷労働の防止、撤廃、対策を現地で行ってきた経験があります。特に、サプライチェーンにおける奴隷労働に光を当てることに注力しています。ビー・スレイバリー・フリーが生み出した動きにより、オーストラリアでは現代奴隷法の可決が実現しました。2007年以降はチョコレート業界との取り組みを行い、カカオ生産における児童労働と奴隷労働の問題への対応を求めてきました。ビー・スレイバリー・フリーに関してさらなる情報は、https://beslaveryfree.com で公開しています。

ご連絡先:ビー・スレイバリー・フリー(オーストラリア)ファズ・キット+61(0)407-931-115(オーストラリア東部標準時)[email protected]

リンク:
世界チョコレート成績表(2022年)
世界チョコレート成績表(2021年)
採点方法

以上

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