2022年2月、マイティー・アースは、『口先だけの甘い言葉:チョコレート業界は、カカオのサプライチェーンにおける森林破壊を終わらせるための約束を果たしていない』と題した調査報告書を発表した。同報告書では、西アフリカとその周辺におけるカカオ産業による森林破壊を止めるという、カカオバイヤーとチョコレート企業による誓約が未達成であることが焦点となった。マイティー・アースによる調査の結果、ガーナとコートジボワールの主要なカカオ生産地において、熱帯林の破壊が進行していることが判明した。
この調査から1年後、マイティー・アースは衛星データを再度確認したが、悲しいことに、熱帯林伐採の全体像は改善されていないことが判明した。2022年のコートジボワールとガーナのカカオ生産地における森林破壊は、依然として高い水準にあった。RADDアラート(「森林破壊検知のためのレーダーアラート」)と呼ばれる、ほぼリアルタイムで森林破壊状況を検知するレーダー波によるモニタリングでは、コートジボワールにおいて2019年以降で最も多い8,000ヘクタール以上の森林消失面積が記録された。ガーナでは、RADDアラートにより、2021年に消失した森林面積に匹敵する1万2,000ヘクタール以上の森林が消失していることが明らかになった。
カカオ業界が森林破壊について対策を講じることを誓約して以降、現在すでに数年が経過している。そのためこれらの森林消失の現状は、懸念されることなのだ。2017年11月の国連気候変動会議において、コートジボワールとガーナの政府は、カカオの取引業者や大手チョコレート企業(ネスレ、ハーシーズ、モンデリーズ、ユニリーバ、マースを含む)とともに、「カカオと森林イニシアティブ」(CFI)に署名した。続いて2019年初頭には詳細な行動計画が発表され、これにより、西アフリカにおけるカカオ農園の拡大による森林破壊を食い止めるとともに、劣化した生態系の再生に取り組むため、カカオのサプライチェーンに関わる企業が断固たる措置を取ることが期待されるようになった。
しかし残念ながら、企業も政府もこの時以来、何も実行していないことが証拠により示されている。コートジボワールでは、カカオ栽培地域における森林消失面積が2019年の5,500ヘクタールから2022年の8,400ヘクタールへと着実に増加している。ガーナでは、森林消失の傾向は一貫していないものの、同じように悲惨な状況である。カカオ栽培地における森林消滅面積は、2019年以降平均で1万2,000ヘクタールとなっていたが、2022年には平均1万2,350ヘクタールとなった。
過去30年間で、ガーナでは65%、コートジボワールでは90%もの森林面積が失われたと推定されるため、これはとりわけ深刻な問題である。 2018年の推定では、ガーナのカカオ生産地には湿潤熱帯林の原生林はわずか100万7000ヘクタール、コートジボワールには103万5000ヘクタールしか残っていないため、これらの損失は非常に大きなものである。この4年間で、ガーナでは4.7%、コートジボワールでは2.6%の森林面積が失われたことになる。
さらに、RADDアラートに基づく森林消失面積の予測は、密集した湿潤の熱帯林のみを含む熱帯林ベースマップのモニタリングに基づくものであるため、かなり保守的な数字だと思われる。CFIとコートジボワール政府が採用する森林モニタリングの「公式」プラットフォーム『IMAGES』は、RADDアラートよりも多くの森林をモニタリングしているが、これによれば状況はさらに危機的だ。IMAGESプラットフォームのデータによると、コートジボワールのカカオ栽培地域では2022年に5万4,000ヘクタール以上の森林消失が検出されており、2020年と2021年の消失面積を上回ったことが明らかとなっている。
森林破壊に繋がる農産物をEU市場で販売することを禁ずる新たな法律が間もなく施行されるため、西アフリカの企業や政府は、カカオ生産地域の森林保護に関するこれまでの誓約を真剣に受け止めざるを得なくなる。マイティー・アースは、CFIとその参加組織・企業らに対し、公開された森林破壊モニタリングシステムの導入、カカオ調達に関するサプライチェーン情報の公開、持続可能なカカオ栽培の支援、劣化した森林景観の再生に積極的に取り組むことを改めて要請する。
マイティー・アースのデータおよび計算の詳細については、マイティー・アースの「カカオ・アカウンタビリティ・マップ」でコートジボアールとガーナについて再度ご覧いただくか、[email protected] までご連絡ください。